高認倫理の過去問と勉強法 押さえておくべき4つのポイント

高認倫理の出題傾向

高認倫理の試験問題は大問[1]~[10]からなり、共通問題[1]~[4]の4×6=24問は必答、選択問題[5]~[10]は、([5]、[6])、([7]、[8])、([9]、[10])から( )の大問のどちらかを各1問、計3題選び、3×2=6問解答する。解答する小問は計30である。

共通問題

大問[1]

「人間としての自覚」に関するもので、ギリシャの思想のウエイトが高い。キリスト教、仏教、中国の思想も毎回出題される。

イスラームはこれらより出題頻度が低い。「人間とは何か」、「芸術と人間」は出題例がない。

ギリシャの代表的な哲学者の名前、系譜、思想、言葉や世界宗教の歴史、開祖、教義の概要、中国思想の学派、思想家の考え、名言などを正確に覚えていないと解けない問題が出題される。

世界史科目ではないので、歴史よりも思想、教義の内容の理解が主になる。アムネーシス、エイドス、アタラクシア、アガペー、四諦八正道、克己復礼など特有の言葉(術語)にも注意しよう。

大問[2]

「国際社会に生きる日本人の自覚」に該当する。出題の中心は、「外来思想と日本の伝統思想」および「西洋思想と日本人の近代化」で、とくに前者の比重が大きい。「日本人の精神風土」の出題はあまりおおくない。

「国際社会に生きる」の内容は、戦後思想の動向などであるが出題例はない。「仏教と日本人の思想形成」では、仏教の受容、奈良仏教、平安仏教、鎌倉新仏教にかんして開祖の教義、思想、事績、言葉を理解する必要がある。

「儒教の日本的展開」では、江戸期に盛んになった儒学の諸学派の創始者の思想、系譜、言葉を理解する。儒学以外の思想潮流:国学、心学、農本主義、洋学や幕末の思想もしばしば出題されるので、代表的な思想家の系譜、思想を押さえておく。

「西洋思想と日本人の近代化」については、明治以来の近代化に呼応した近代への啓蒙、近代的な自己の確立、創造的な思想を、歴史と対応づけて習得するのがよい。とくに啓蒙思想、自由民権思想、キリスト教と近代日本は出題頻度が高い。

大問[3]

「現代を生きる人間の倫理」の章からの出題である。ここは「倫理」の中心課題が集まっている。出題の中心は「人間の尊厳」、「新たな人間像の模索」で、「民主社会の倫理」、「自然や科学技術と人間とのかかわり」、「民主社会の成熟のために」はそれに次ぐ。

「自然や科学技術と人間とのかかわり」、「民主社会の成熟のために」は「現代の課題を考える」につながるので、画然とわけることができない。

  • 人間尊重へ向けて:とくにルネサンス、人文主義者、宗教改革。
  • 合理的精神の確立:科学革命、近代合理主義、モラリスト。
  • 社会契約説:ホッブズ、ロック、ルソー。
  • 人格の尊厳:カント。

と、例年まんべんなく試験に出る。それぞれの思想の流れ、思想家の学説、言葉を正確に理解するようにしよう。

「民主社会の倫理」では、ヘーゲルの人倫の思想、功利主義がしばしば出題される。

「新たな人間像の模索」に関し、キルケゴールにはじまる実存主義の潮流、サルトル、レヴィーストロース、フーコー、レヴィナスなど大戦後の思想家が問題に出ることも多いので、教科書にでてくる新しい思想の潮流に目配りが必要である。

「自然や科学技術と人間とのかかわり」では、ゲーテ、シュヴァイツアー、ガンディーの事績が、「民主社会の成熟のために」ではマザーテレサが出題されている。

大問[4]

「青年期の課題と自己形成」と「現代を生きる人間の倫理」からの出題になる。一部は「現代の課題を考える」の「国際平和と人類の福祉」とも重なる。

選択問題

大問[5]

「現代の課題を考える」の生命が対象になり、遺伝子検査、終末期医療、ターミナルケア、インフォームドコンセント、臓器移植、生殖補助医療から出題されている。

大問[6]

「現代の課題を考える」の環境が対象になり、生物多様性、水資源、環境問題、環境意識、生物種の絶滅、自然保護などから出題されている。

大問[7]

「現代の課題を考える」の家族、地域社会、のほかに労働が対象となる。家族、地域社会、高齢化、性別役割分担、長時間労働、高齢者と地域社会、家族と地域社会が出題されている。

大問[8]

「現代の課題を考える」の情報社会が対象となり、インターネット、メディア倫理、ソーシャルメディアと情報リテラシー、携帯電話・スマホ・ネットなどから出題されている。

大問[9]

「現代の課題を考える」の文化と宗教が対象となり、外国人文化、異文化理解、外国人の言葉の壁、多文化主義、外国人旅行者、グローバル人材、などから出題されている。内容的に、「現代を生きる人間の倫理」の新たな人間像の模索にも関連がある。

大問[10]

「現代の課題を考える」の国際平和と人類の福祉が対象となり、さらに、「現代を生きる人間の倫理」の「民主社会の成熟のために」にも関連する。人口増加と貧困、貧困国の成長、人類の福祉、経済格差、児童福祉指標、などが出題されている。時事的なトピックスが出題されることが多いため、教科書に載っていない話題も試験に出ることがある。

高認倫理の出題傾向に変化は?

平成24年度から平成26年度の3年間で、第1回、第2回の出題傾向に変化があることはない。

40点を目指す為に捨てる項目と重要な項目

試験問題の配点は、共通問題(24問)の各小問3~4点、計82点。選択問題(6問)の各小問3点、計18点。あわせて100点満点である。

選択問題の大問[5]~[10]と6問あるが、配点(18点)は、共通問題の大問1問分の配点(82÷4=20.5点)より低いことに注意しよう。

選択問題は、「現代の課題を考える」に関する時事的な出題が多く、

  • 会話文
  • 課題レポート
  • 新聞記事

と、出題は多彩で、選択する問題を決めるのが一苦労である。また、資料の読取りが多いので、試験時間配分上、不利なため、「時間が余ればトライする」ということでよいのでしょう。

共通問題は、

  • 「人間としての自覚」
  • 「国際社会に生きる日本人の自覚」
  • 「現代を生きる人間の倫理」
  • 「青年期の課題と自己形成」

からの出題で、問題の形式は、論文、課題レポート、会話文とあるが、暗記の効く問題であった。覚えた分コンスタントに得点できるので、これらのうち得意な3項目を選んで、勉強するのが良い。

「青年期の課題と自己形成」は、時に教科書に記述のない新しい話題がでることがあり、また資料読取りもあるので、要注意である。

共通問題

大問[1]

「人間としての自覚」
世界史を勉強した人は、内容が重なるところが多いので、有利である。但し、「倫理」では各々の思想家、や宗教家、教団の思想、教義を理解する。特有のキーワード、格言を習得する必要がある。仏教、中国の思想などでは、五行、四苦、五成、四徳などの類語にも注意する。

大問[2]

「国際社会に生きる日本人の自覚」
日本史を勉強した人は、内容に重なるところが多いので、有利である。大問1と同じく、各々の思想家、開祖の思想、教義を理解する。外来思想と日本の伝統思想、特に、奈良以前~鎌倉期の仏教と日本人の思想形成、江戸期の儒教、国学、庶民・農民の思想、洋学などは例年出題がある。

大問[3]

「現代を生きる人間の倫理」
人間の尊厳、民主社会の倫理については、「世界史」の勉強が役立つ。これらは「倫理」の中心となる項目である。「人間の尊厳」は、例年出題されるので、各思想家の思想、主著、キーワードを覚えよう。

大問[4]

「青年期の課題と自己形成」「現代を生きる人間の倫理」
「青年期の意義」、「青年期の課題と生き方」を「新たな人間像の模索」「自然や科学技術と人間の関わり」「民主社会の成熟のために」とあわせて出題される傾向があるので、一括して勉強しよう。時事的な問題も出ることがある。

共通問題

大問[5]~[10]

時事的、トピックス的な出題が多いため、教科書の内容だけでは、不足する場合がある。新聞、テレビなどのジャーナリズムで話題になっている事項にも目を向けている必要がある。

会話文による出題が多いので、ある程度の常識があれば、特に勉強していなくても、正解に達することがある。

例年出題されていたが減少した又は減少傾向にある項目

「国際社会に生きる日本人の自覚」の「日本人の精神風土」は減少傾向にある。